相続の基礎知識 |
相続人とは、亡くなられた方の財産を引き継ぐ人のことです。
亡くなった人を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「相続人」と言います。
相続人になることができる者及びその順位は民法によって定められています。
配偶者(常に相続人となります)
第一順位 被相続人の子(胎児にも相続権が認められています。但し、死産の場合は相続権がなかったものとして無効となります)
第二順位 被相続人の直系尊属(父母、祖父母)
第三順位 被相続人の兄弟姉妹
※「相続欠格事由」に該当したり、「相続排除」された場合は相続権はありません。
法定相続分とは、① 配偶者と子の場合 1/2:1/2 ② 配偶者と直系尊属(父母など)の場合2/3:1/3 ③ 配偶者と兄弟姉妹の場合 3/4:1/4
※平成25年9月5日以後に開始した相続については、嫡出子と嫡出でない子の相続分は同じ となります。また平成13年7月1日~平成25年9月4日までの間に開始した相続についても遺産分割が終了・確定されている場合を除いて相続分が同じと扱われます。
代襲相続とは、被相続人の死亡以前に相続人の死亡、排除、欠格事由のため相続権を失った場合、その者の直系卑属(子、孫)がその相続人の受けるべき相続分を代わりに相続します。
※相続放棄の場合は、代襲相続はありません。
相続財産とは、次のようなものがあります。
不動産・現金・預貯金・株式・社債・ゴルフ会員権・宝石・貴金属・書画骨董・家具・自動車・貸付金・売掛金・電話加入権 などのプラス部分 と 借金・買掛金・未払金などのマイナス部分
※生命保険金と死亡退職金は、相続財産になる場合とならない場合があります。
※借地権・借家権についても、財産権と考えられており相続の対象となります。相続の場合の借地権は地主の承諾は必要なく、名義書換料なども払う必要はありません。また、借家についても退去する必要もありません。
遺留分とは、被相続人の遺言によっても害することのできない、相続人が相続に関して保障されている遺産分です。
※遺留分減殺請求は内容証明郵便で背級できます。相続開始等があったことを知ってから
一年間行わなった場合は時効で消滅します。相続開始前の遺留分放棄は認められてい
ます。
遺言には、次のようなものがあります。
①「自筆証書遺言」・「公正証書遺言」・「秘密証書遺言」 ②「危急時遺言」・「隔絶地遺言」
※①は普通方式遺言、②は特別方式遺言と呼ばれている遺言です。
一般的に作成されているのは、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
遺言は法定相続より優先されます。
以下に該当されるような方は遺言書の作成をお奨めします。
例えば
① 子供がいない夫婦
② 財産のほとんどが不動産である
③ 長男だけに財産を相続させたい
④ 相続人以外の者(生前に世話になった人、療養看護してくれた息子の嫁等々)に
財産の一部を上げたい
⑤ 相続させたくない子供がいる、相続でもめそう、争いが起こりそうと思われる人
⑥ 内縁関係の妻や認知していない子供がいる人
⑦ 相続人がいないので財産を全て寄付したい(相続人が存在しない)
な ど
※遺言書作成上の注意点
・遺言書には法の決まりがある「相続」、「身分」、「財産処分」
・遺留分に注意しながら具体的に記載する
・無効や問題となる場合・・・・・遺言能力や判断能力(事理弁識)、口授・口述要件、
日付、自署押印、記載や訂正の仕方など
・自筆証書の場合、書き損じたら書き直したほうが無難
・自筆証書遺言の方式が緩和されました(平成31年1月13日施行)
財産目録(不動産・預貯金・有価証券など)は、ワード(Word)で作成可能
銀行の通帳の写し、不動産登記事項証明書添付でも可能
但し、各頁に署名押印が必要です。
相続手続きの流れ |
被相続人死亡(相続開始) ⇒ 次のような準備をします。
・遺言書の有無の確認(遺言書がある場合、公正証書遺言以外は家庭裁判所で検認が必要と
なります)
・相続人の調査・確定(被相続人の戸籍謄本出生から死亡までの連続したもの及び相続人の
戸籍謄本の収集から『 相続人関係図 』を作成します)
・相続財産の調査(固定資産税評価証明書、名寄帳、不動産登記簿謄本(全部事項証明書)、
金融機関の残高証明書などを基にして『 財産目録 』を作成します)
【相続手続きに必要なもの(共通)】
①被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本(現戸籍・除籍・原戸籍の謄本すべて)
②相続人の戸籍謄本と印鑑証明書
③相続登記をされる方、①②のほか被相続人の住民票除票と相続人の住民票
⇒ 相続開始より3ヵ月以内 相続放棄(放棄する場合は、家庭裁判所に伸述をします。
しない場合は、承認したものとみなされます。
※プラス財産よりマイナス財産が多い場合など)
⇒ 相続開始より4ヵ月以内 被相続人の準確定申告
⇒ 相続開始より10ヵ月以内 相続税の申告・納付(相続税は0円でも基礎控除額を超え
ているときは申告が必要です。
( 例えば、配偶者の税額軽減の適用を受ける場合、小規模宅地等の評価減特例の適用を受
ける場合など )
・遺言書がある場合は、遺言書に従って財産分与を行います。
・遺言書がない場合は、相続人全員による遺産分割協議を行い遺産分割協議書を作成します。
・各相続人名義に変更します。
【 葬儀後の主な届出、手続きは下記のようなもの 】
●生命保険請求 ●入院保険金請求 ●死亡退職金請求 ●健康保険(返納)、
葬祭費・埋葬料請求) ●年金(遺族年金・未支給年金請求) ●労災保険(葬祭料・遺族補償
年金等請求) ●雇用保険(未支給失業給付金請求) ●公共料金・電話等の名義変更
●株式債券の名義変更 ●ゴルフ会員権の名義変更 ●クレジットカード退会届出 ●農協・信
金の出資金名義変更 ●火災保険名義変更 ●借地・借家・賃貸住宅の名義変更
●法人役員の変更登記 ●自動車の名義変更 ●運転免許証・各種免許証類・会員証の届出
●不動産の名義変更 ●預貯金の名義変更・支払請求 など
< 相続手続きのながれ >
― 目 安 ―
死亡届の提出・葬儀
社会保険・年金関係の手続き
生命保険・損害保険の手続き
遺言書の有無確認
相続人の確定(戸籍の取寄せ)
相続財産の把握(プラスマイナス財産)
相続の放棄・限定承認
( 3ヵ月以内 )
↓
所得税の申告・納付
( 4ヵ月以内 )
↓
相続財産の調査・収集
遺産分割協議
預貯金・有価証券などの換金・名義変更
不動産の名義変更
借入金債務の承認手続き
相続税の申告・納付
( 10か月以内 )
【 相続手続きセット価格 】
相続手続き一式
〇相続人の確認(戸籍の収集)・相続関係説明図
〇相続財産の調査確認・財産目録の作成
〇遺産分割協議書の作成
〇預貯金の解約手続き
【 セット価格 】
遺産総額 4,000万円未満 ・・・・・・・・・・・ (料金) 100,000円+税
遺産総額 8,000万円未満 ・・・・・・・・・・・ (料金) 150,000円+税
遺産総額 12,000万円未満 ・・・・・・・・・・・ (料金) 200,000円+税
但し、特殊な場合は料金が変わることがあります。
※不動産登記手続き(司法書士)、相続税申告手続き(税理士)については、ご紹介もさせ
ていただきますが、別料金となります。
生前対策のすすめ |
〇遺言書の活用
遺言書とは「誰に」「何を」「相続させる」を指定する法律行為。法律上有効な効力を持つ方法。
今話題となっているエンディングノートでは相続開始後の指定の効果はありません。
「公正証書遺言」は、原本が保管されているため、改ざんや紛失の恐れがない。
家裁での検認がいらないため相続開始後すぐに名義変更などで使うことができる。
「自筆証書遺言」は、いつでも作成や新しいものに書き直しができる。
費用は掛からないが、紛失や破損により無効となりやすい。
相続開始後、封印のまま家裁での検認手続きが必要(開封した場合5万円以下の過料)。
【メリット】
・指定した人に財産を相続させることができる。・相続人同士の愛想意を防ぐことができる。
・遺産分割において優先して取り扱われる。
【デメリット】
・遺言者が認知症になった場合、作成や更新することができない。
・遺言者の死後には財産の分け方について柔軟性がない。
〇成年後見制度の利用
成年後見制度は、精神上の障害(知的障害」・精神障害・認知症など)により判断能力が十分
でない方が不利益を被らないように、その方の権利を保護するための制度です。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
後見人は本人のために「財産管理(現金や預金の入出金の管理、生活費や家賃等の支払
い、居住用不動産の処分など)」 と 「身上監護(治療や入退院等に関しての病院への手続
き、処遇の監視異議申立て、要介護認定・更新の手続きなど」 を行います。
【メリット】
・親族の使い込みを防ぐことができる。
・複数の専門家が関わるため本人にとって最良のサービスを受けられる。
【デメリット】
・後見人が付くと子供への継続的な援助ができなくなる。
・財産目録や帳簿の作成など。煩雑な事務手続きを行う必要ががある。
・本人の財産処分について柔軟な対応ができなくなる
〇民事(家族)信託の活用
民事信託とは、「信託法」に基づく制度で超高齢化社会を背景に多様化する家族関係に配慮
した柔軟な財産管理や遺産承継ができるほか、家族の安心の生前対策を目的とした信託の
活用が法的に可能となりました。
信託の基本構造は、「委託者」「受託者」「受益者」と「信託財産」から構成されます。
これらの信託契約の中で、「誰が」 「誰に」 「何を」 託すのか、また 「誰が」その財産を受け取
るのかを明確に決める形になります。 例えば、 親が元気なうちに子供と信託契約を結び、自
宅不動産を信託する。
信託財産は、金銭(但し、預貯金、預金債権は信託財産とすることはできない)でも不動産でも
プラスの財産であれば、どんなものでも信託財産とすることができます。また、全ての財産を信
託する必要はありません。
〇相続税対策
以下の項目については、専門家に相談やアドバイス、説明を受けてから行うようにして下さい
●生前贈与
年間110万円までは、非課税で贈与をすることが可能。但し、相続開始前3年以内に相続人
への贈与をしていた場合には、贈与した財産は相続財産として含まれる(注意が必要)。
贈与税は贈与を受けた人が支払う。
・相続時清算課税制度(60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子又は孫に対し、財産
を贈与した場合2500万円まで贈与税が非課税。但し、相続開始時の相続税計算は当時
の価格評価で行われる)、おしどり贈与(婚姻期間が20年以上の夫婦間の贈与の特例、
贈与税の特例税率(直系尊属父母・祖父母からの贈与による財産を取得した受贈者贈与
した年の一月一日において20歳以上の者に限る)の利用
●養子縁組
相続人が増えることで、非課税枠を増やすことが出来ます。但し、相続税法では基礎控除の
対象となる養子(特別養子縁組は除く)の数に制限があります。
実子がいない場合は2人まで、実子がいる場合は1人まで なお、特別養子縁組は実子と
みなされます。
● 小規模宅地の活用
相続開始時に、賃貸アパート等を所有して当該物件を貸し付けている場合、200平米まで
50%評価を減額することが可能です。
●生命保険の加入
相続人が取得した死亡保険金・損害保険金は法定相続人の人数×500万円までは非課税と
なります。
●その他
相続税法上の非課税財産となる墓地・墓石の購入や将来必要となる土地の測量や境界線画
定も事前に済ませておくことで、課税対象財産を減らすことができますので、相続税対策の一
環として有効です。
法定相続情報証明制度 |
法務局において、各種相続手続きに利用することができる「法定相続情報証明」を利用することで、各種相続手続きで戸籍謄本の束を何度も出し直す必要がなくなりました。
【制度の概要】
1. 申出(相続人または行政書士などの代理人)
① 市区町村の窓口で戸籍・除籍謄本等を収集
② 法定相続情報( 被相続人・相続人相関図 )一覧図を作成
③ 所定の申出書を記載し①及び②の書類を添付して申出
2.確認・交付(法務局)
① 登記官による確認、法定相続情報一覧図の保管
② 認証文付き法定相続情報一覧図の写しの交付、戸籍謄本等の返却
(一覧図の写し無料で必要枚数交付 )
3.利用
各種の相続手続きに利用
例:銀行の預金の払戻し、被相続人の残高証明書、相続人の名義変更(登記)
【 リンク 】
遺産相続や遺言、相続税など相続に関する解説
相続放棄の基礎知識、手続きや注意点など相続放棄に関する解説